黄色いあいつに熱視線

ワイシャツ姿の人のスラックスのポケットに,黄色くて太い何かが刺さっていました.近づくにつれ明らかになったその正体は,500mlのペットボトルのオレンジジュースでした.うまく表現できない違和感を覚えました.

その人に続いてエスカレータに乗りました.と,前に立つその人,片足を前の段に乗せ,腿の上に鞄を乗せ,中をガサゴソし始めました.折った脚のポケットから,オレンジジュースがニュニュニュと絞り出されてきました.「落ちそうだな.でも落ちないな.落ちてエスカレータを転げ落ちていったら危ないな.私が体を張って止めるしかないな」と,絶妙な刺さりっぷりのペットボトルをハラハラしながら凝視していました.本人の注意度が下がってガサゴソ度が上がった瞬間,遂にオレンジジュースが産み落とされました.身構えていたにもかかわらずノーバウンドでキャッチできなかった自分の運動神経が悲しいですが,床に落ちた瞬間に捕えることはできました.言わんこっちゃない.いや,何も言っていない.

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